こんにちは、がおです。

前回の記事でAONIC5の故障について書きましたが、今回は手持ちのER4Sを活用するためのDAC導入について詳しく検討していきます。音質にこだわる方なら一度は聞いたことがあるであろうER4Sですが、その真価を発揮するにはどのようなDACが最適なのでしょうか。

携帯性、音質、価格という3つの観点から、現在市場で評価の高い主要なポータブルDAC製品を分析し、論理的に最適解を導き出していきます。

音楽を聞く男性

出典:Pexels

1. ER4Sの特性とDAC選択の基準

1.1 ER4Sの基本特性

ETYMOTIC RESEARCH ER4Sは、37Ωという比較的高いインピーダンスを持つバランスドアーマチュア型イヤホンです。感度は約92dB/mWと低めで、スマートフォンの内蔵アンプでは十分な音量を確保しにくく、また音質面でも本来の性能を発揮できません。

ER4Sの魅力は、その正確性と解像度の高さにあります。特に中高音域の透明感と定位の良さは他の追随を許しません。しかし、この特性を活かすためには、十分な駆動力と低ノイズ性能を持つDACが必要不可欠です。

1.2 DAC選択の評価基準

今回の分析では、以下の3つの観点から評価を行います:

  • 携帯性:サイズ、重量、接続の簡便性
  • 音質:駆動力、S/N比、音質傾向
  • 価格:コストパフォーマンス、絶対価格

2. 主要ポータブルDAC製品の詳細分析

2.1 エントリークラス(1万円前後)

FiiO KA11(約5,500円)

FiiO KA11

FiiO KA11 – 超小型ながら200mWの高出力を実現

FiiO KA11は、エントリークラスの代表格として位置づけられる製品です。Cirrus Logic社のCS43131 DACチップを搭載し、最大200mWの出力を実現しています。

携帯性:全長44.5mmという超小型設計で、重量も軽く携帯性は抜群です。USB Type-CとLightning版が用意されており、iPhoneでも問題なく使用できます。

音質:価格を考慮すると非常に良好な音質を提供します。FiiOらしいメリハリのあるサウンドで、ER4Sの特性を活かすのに十分な駆動力を持っています。ただし、上位機種と比較すると若干の物足りなさを感じる場面もあります。

価格:約5,500円という価格は、DAC入門機として非常に魅力的です。コストパフォーマンスは極めて高く、初めてのDAC導入には最適な選択肢と言えるでしょう。

SHANLING UA2(約12,000円)

ESS ES9038Q2M DACチップを搭載し、3.5mmとバランス2.5mm出力を備えています。音質は価格帯として優秀ですが、一部のユーザーからは接続の不安定さが報告されています。ER4Sとの組み合わせでは、バランス接続が使えない点がマイナス要因です。

DUNU DTC480(約13,000円)

CS43198 DACチップを2基搭載し、3.5mmと4.4mmバランス出力を備えています。重量20gという軽量設計で携帯性に優れ、UAC1.0対応でゲーム機でも使用できる汎用性が魅力です。

2.2 ミドルクラス(1.5万円〜3万円)

LETSHUOER DT03(約15,700円)

LETSHUOER DT03

LETSHUOER DT03 – デュアルES9219C搭載で高い透明感を実現

LETSHUOER DT03は、ES9219C DACチップを2基搭載したミドルクラスの代表格です。LETSHUOERらしいニュートラルでバランスの良いサウンドが特徴です。

携帯性:アルミニウム合金製の筐体で高級感があり、サイズも適度にコンパクトです。3.5mmと4.4mmバランス出力を備えており、ER4Sではバランス接続はできませんが、将来的な拡張性を考慮すると優位性があります。

音質:デュアルDACチップによる高いS/N比(119dB)と低歪率が特徴です。音質は非常にクリアで立体感があり、ER4Sの特性を十分に活かすことができます。音の個性は薄く、ソースの音質をそのまま伝える傾向があります。

価格:15,700円という価格は、搭載されている技術を考慮すると妥当な水準です。専用ケースも付属しており、トータルでの価値は高いと評価できます。

Lotoo PAW S1(約30,000円)

Lotoo独自のDACチップを搭載し、3.5mmと4.4mmバランス出力を備えています。音質は真面目でフラットな傾向ですが、価格に対する音質向上効果は限定的との評価もあります。EQ機能が充実している点は評価できますが、今回の要求には過剰な機能です。

2.3 ハイエンドクラス(3万円以上)

FiiO BTR7(約34,000円)

Bluetooth接続にも対応したハイブリッド型DAC/アンプです。有線接続時の音質は非常に優秀で、「DAPいらず」と評価されるほどです。ただし、今回の用途では無線機能は不要であり、価格面でのメリットは薄いです。

Astell&Kern AK HC4(約40,000円)

AK4493S DACチップを搭載し、Astell&Kernらしい上質な音質を提供します。しかし、価格に対する音質向上効果は限定的で、ER4Sとの組み合わせでは費用対効果が低いと判断されます。

iBasso DC-Elite(約73,000円)

iBasso DC-Elite

iBasso DC-Elite – 最上位クラスの音質を実現するフラッグシップモデル

ROHM BD34301EKV DACチップを搭載したフラッグシップモデルです。音質は確かに素晴らしく、「15万円以下のDAPを食う」と評価されるほどですが、価格が高すぎてER4S用途としては現実的ではありません。

3. 比較分析表

製品名 価格 DACチップ 出力 サイズ 総合評価
FiiO KA11 5,500円 CS43131 200mW 44.5mm ★★★★☆
DUNU DTC480 13,000円 CS43198×2 22×44×14mm ★★★★☆
LETSHUOER DT03 15,700円 ES9219C×2 中型 ★★★★★
Lotoo PAW S1 30,000円 独自 中型 ★★★☆☆
iBasso DC-Elite 73,000円 BD34301EKV 500mA 小型 ★★★★★

4. 論理的結論と推奨案

4.1 用途別推奨機種

最もバランスの取れた選択:LETSHUOER DT03

携帯性、音質、価格の3要素を総合的に評価すると、LETSHUOER DT03が最適解として浮上します。デュアルES9219C搭載による高い音質性能と、15,700円という妥当な価格設定が魅力です。ER4Sの特性を十分に活かせる駆動力を持ちながら、携帯性も確保しています。

コストパフォーマンス重視:FiiO KA11

初回のDAC導入や、とりあえず音質向上を試してみたい場合は、FiiO KA11が最適です。5,500円という価格でありながら、ER4Sの音質向上効果は十分に体感できるレベルです。

将来性重視:DUNU DTC480

4.4mmバランス出力への将来的な拡張性を考慮する場合は、DUNU DTC480が有力な選択肢となります。軽量設計と汎用性の高さも魅力的な要素です。

4.2 選択理由の論理的説明

ER4Sという高解像度イヤホンの特性を考慮すると、DAC選択においては以下の優先順位が適切です:

  1. 駆動力の確保:37Ωのインピーダンスを十分に駆動できること
  2. 低ノイズ性能:ER4Sの解像度を活かすためのクリーンな信号
  3. 携帯性:日常的な使用に支障のないサイズ・重量
  4. 価格合理性:イヤホンとのバランスを考慮した適切な価格設定

これらの観点から、LETSHUOER DT03は最もバランスの取れた選択肢と判断できます。特に、デュアルDACチップによる高いS/N比は、ER4Sの微細な音の変化を正確に再現する能力を提供します。

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5. 実用的な導入プラン

5.1 段階的導入戦略

予算や使用頻度を考慮した段階的なアプローチを提案します:

ステップ1:まずはFiiO KA11で体験
5,500円という低価格でDAC導入の効果を確認できます。ER4Sの音質向上を実感できれば、より上位機種への投資も検討できます。

ステップ2:本格運用でLETSHUOER DT03
DAC導入の効果を確認できた場合、LETSHUOER DT03への移行を検討します。デュアルDACチップによる高音質は、ER4Sの真価を発揮させるのに十分な性能を提供します。

5.2 接続環境の整備

iPhoneとの接続においては、以下の点に注意が必要です:

  • iPhone 15以降:USB-C接続が可能
  • iPhone 14以前:Lightning-USB変換アダプタが必要
  • 電力供給:長時間使用時はモバイルバッテリーの併用を検討

結論

手持ちのER4Sを最大限活用するためのDAC選択において、携帯性、音質、価格の3要素を総合的に評価した結果、LETSHUOER DT03が最適解として導き出されました。

15,700円という価格は決して安価ではありませんが、ER4Sの持つ高解像度と正確性を十分に活かすことができる性能を持っています。デュアルES9219C搭載による119dBの高いS/N比と低歪率は、ER4Sの微細な音の変化を正確に再現し、本来の音質を体験させてくれるでしょう。

ただし、DAC初体験の場合は、まずFiiO KA11で効果を確認してから本格導入を検討することをお勧めします。音質向上の効果を実感できれば、より上位機種への投資も納得できるはずです。

暑い夏が近づく中、AONIC50の重量と発熱が気になる季節です。ER4SとポータブルDACの組み合わせで、快適で高音質な音楽ライフを送ってみてはいかがでしょうか。

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